「近くて、よい山」谷川岳の楽しみ方
ロープウェイでさくっと登ってそこから始まる本格的な登山。
笹薮の広がる見晴らしの良い尾根道。
程よい岩場あり、鎖場あり。
山頂(トマノ耳)まではとても賑わう山道。
家族連れも多く、スニーカーや私服で登る人もチラホラ(正直、かなりリスクはあると思う…)。
軽装登山はお勧めしませんが、それなりに装備を備えた人の登山デビューには持って来いの、楽しい山。
さらに私が魅力に感じたのが、コロコロコロコロ変わりゆく天気。
晴れていたかと思ったら急に霧が出てきて雨が降り出し、「よし、カッパ装着完了!」と歩き始めるとまたお日様が顔を出し…を繰り返す。
街では「面倒くさいなぁ」と感じることも、山ではそれすらお楽しみの一つになってしまう。
そんな山の楽しさを教えてくれたのが、谷川岳です。
魅力的なルートがたくさんあり、「次はあそこのルートから登ってみたいなぁ…」と、山登りしながらついつい次回の予定を立ててしまう、そんな楽しみも。
【初回】天神尾根コース(天神平駅~トマノ耳・オキノ耳~ノゾキ)
2011年8月。
初めての谷川岳は、ロープウェイを使って一番人気の天神尾根コースを日帰りで。
山仲間とともに、トマノ耳・オキノ耳を越えて、ノゾキまで。
一ノ倉沢を真上から見下ろし、圧倒される。
しかし皆で夢中になりすぎて、ロープウェイ終了時刻に危うく間に合わなくなりそうになり、雨が降る天神尾根をハイスピードで下山。
いろいろと反省点は多かったのですが、その一連の山行が、とにかく楽しかった!
これをきっかけに、「一人でも山に行けるんじゃないか?!」というささやかな自信と、「もっともっといろんな山に登りたい!」という欲望を抱き、単独での山行にもハマりだすことに。
2011年10月。
初めての谷川岳から2か月後。
「次は一ノ倉沢を正面から見てみたい!」と思い、谷川岳の向かいの山、白毛門(しらがもん)に単独日帰り登山。
いや、これがもう…急登急登急登の連続で…しかもピストンだったので…下山時にはもう足がガクガクガクガク。
下っても下っても永遠と下りが続き、かなりハードな登山になりました。
しかし、達成感は半端なかった!
登山者もかなり少なく、紅葉を独り占め。
そして何より、正面から見る一ノ倉沢がとにかくかっこよかった!!
【3回目】(谷川岳山岳資料館~マチガ沢出合~一ノ倉沢出合)
2012年10月。
単独で、秋の一ノ倉沢ハイキング。
観光客の皆さんに混じり、のんびり散策です。
前回見下ろした一ノ倉沢を、今度は下から見上げてみました。
「ここを登っていくなんて、絶対無理!!」…と、間近に見る雪渓に圧倒。
そして「魔の山」に魅せられた人々の、数々の慰霊碑に心の中で黙とう。
帰りは湯檜曽川沿いを歩きましたが、たくさんのキノコが生えていて秋を感じました。
「登山」ではなかったけれど、こんな楽しみ方もできるのも谷川岳の魅力。
【4回目】(1日目:巌剛新道~西黒尾根~肩ノ小屋、2日目:肩ノ小屋~トマノ耳・オキノ耳~一ノ倉岳~茂倉岳~茂倉新道~土樽駅)
2013年7月。
谷川岳で初めての一泊登山(またしても単独です)。
前回ハイキングの際に見つけた巌剛新道から西黒尾根に合流し、肩ノ小屋で一泊。
翌日は茂倉新道から新潟側の土樽へ下山。
かなりマイナーなルートだったようで、とくに茂倉新道では孤独な下りを満喫(二日目に出会ったのは4組のみ)。
群馬から新潟へ国境を歩いて越える…しかも川端康成の『雪国』のあのトンネルの真上を歩く…という、ロマン溢れる旅でした。
【5回目】馬蹄形縦走コース(1日目:土合口~白毛門~笠ヶ岳~朝日岳~七ツ小屋山~蓬ヒュッテ、2日目:蓬ヒュッテ~武能岳~茂倉岳~一ノ倉岳~オキノ耳・トマノ耳~天神平駅)
2018年8月。
前回から5年が経ってしまいました。
今度は山ガールとしてではなく(?!)、夫婦で挑戦です。
白毛門に登って以来、「いつか絶対挑戦してみたい!」と思っていた馬蹄形ルート。
しかしかなりハードな行程だけに、個人でチャレンジするにはとても不安があり、なかなか実行に移せていませんでしたが…
ひょんなことから「ぐんま県境稜線トレイル・山の日イベント」の一つにこの馬蹄形縦走ツアーがあることを知り、夫婦でツアーに参加することとなったのです。
(というか、半ば強引に夫を誘いました…)
で、結果的には…
熱中症など脱落者もいる中で、なんとか最後まで踏破こそできたものの…
(フィジカル的な)準備が全然できておらず、2日目に足が思うように動かなくなり、イベントの救助隊の皆さんに助けてもらいながらの下山になりました。。
あぁ、情けない。申し訳ない。。
しかし踏破させてもらえたことには本当に心から感謝です。。
ちなみに、これが初めての谷川岳だった夫は、ヒーヒー言いながらも最後まできちんと自力で踏破することができました。
あっぱれ!!
馬蹄形ルートの絶景もさることながら…
5回目の谷川岳登山は、反省点の多すぎる山行となりました。。
体力をしっかりとつけて、誰にも迷惑をかけずに、また大好きな谷川岳に挑戦したいものです。
(イベントの前日、稜線の視察飛行をしていた群馬県の防災ヘリが墜落し、9名の搭乗者が亡くなりました。山の安全を守って下さっていた方々の尊い命がなくなってしまったこと…とても悲しく残念な思いです。改めてご冥福をお祈りいたします。)
それにしても山を始めるまでは、谷川岳が「近くて、よい山」などとは微塵も知りませんでした。
それどころか谷川岳と言えば「魔の山」。
この山の(一ノ倉沢の)踏破を目指し、何百人という人が命を落としています。
「危険な山」という印象のほうが断然強いイメージ。
(谷川岳の予習に、『クライマーズハイ』を読んでしまったことも影響しているかもしれないが…。)
「近くて、よい山」かつ「魔の山」。
そんな二面性がまた、谷川岳の魅力なのだろうなぁ。